私たちは体重が増加すると病気(生活習慣病)に繋がることを知っていますので、適度に食事制限や運動をして体重を維持しています。ところが何かしらの原因によって体重が減少してしまうことがあります。
体は 体重を増加させる力が強いにも関わらず、体重が減少してしまう。これは自然界に生きるという視点から見た場合には、非常に好ましくない状態ともいえるのです。そこには病気などの原因が隠されているかもしれません。
体重管理は健康のバロメーターといえるかもしれません。痛みなどを伴わずに定期的に測定できる臨床検査のひとつとして捉えることもできます。
ここでは体重の減少について、体の内部では何が起こっている可能性があるのか、そうした話を進めていきたいと思います。
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目次
体重が減少するメカニズム
人間は食事によって栄養素を体に取り込んで生命活動を営んでいます。体重が減少するということは、大きくわけて二つの理由が考えられます。
ひとつは摂取するエネルギーが少ないこと。もうひとつは消費するエネルギーが大きいこと。
摂取するエネルギーが消費するエネルギーよりも多ければ体重増加、少なければ体重減少。と考えることもできます。もちろんこれにはさまざまな要因が複雑に絡み合っています。
体重減少を伴う例を挙げながら説明をします。
摂取するエネルギーが少ない
精神的な問題
“うつ病”や“双極性障害”などの精神疾患では、食事をする元気がなくなることや、食事をすることへの嫌悪感や罪悪感で十分な食事が摂れなくなることがあります。
食べる問題
“虫歯(齲歯)”や“歯肉炎”、“嚥下障害”などによって食事がうまく食べられなかったり、食べたりすることに苦痛が伴う場合には、十分な食事が摂れなくなることがあります。
食欲不振
“逆流性食道炎”や“胃炎”などがあると、胸やけや胃痛を伴うこともあり、食事が十分に取れないこともあります。
消化や吸収不良
消化器に何かしらの問題があると、食べ物がうまく消化できなくなることや、栄養素がうまく吸収できないことがあります。下痢を伴うこともあります。
糖尿病
血糖値を下げるインスリンというホルモンがうまく働かなくなると“糖尿病”という病気になります。血糖値を下げることができないということは、臓器や細胞に血糖(エネルギー)を補給できないということです。
つまり臓器や細胞は飢餓状態に陥って、体重が減少していきます。
寄生虫
“裂頭条虫(サナダムシ)”などの寄生虫が感染している状態では、人間が吸収すべきエネルギーを寄生虫が吸収してしまい、結果として体重の減少に繋がることがあります。
消費するエネルギーが大きい
風邪などの感染症
人体は病原菌や病原体を倒すために、さまざまな生体防御反応を使って対応します。熱が高くなれば、それだけ多くのエネルギーを消費します。また咳などの症状でも多くのエネルギーを消費していきます。
基礎代謝の上昇
さまざまな原因を考えられますが“バセドウ病”という病気では、甲状腺という臓器から分泌されるホルモンが増えることによって消費するエネルギーが上昇してしまいます。微熱が伴うこともあります。
悪性腫瘍
悪性腫瘍は無秩序に増殖する性質があり、大量のエネルギーを消費します。
がん細胞が大量のブドウ糖を細胞内に取り込む性質を利用した検査には“PET”があります。
体重の減少は他にもさまざまな理由がありますが、女性であれば“生理不順”や“生理が止まる”といった症状に繋がることもあります。
また慢性的なエネルギー不足は“疲れやすさ(易疲労)”を引き起こすこともあります。運動やダイエットを行っていないにも関わらず体重が減少する場合には、受診することをおすすめします。
体重減少に関係している病気とは
体重減少を伴うことが多い病気
前項で挙げた病気には、あまり自覚症状がなく体重が減少していく病気も含まれていました。この項では体重減少を伴うことが多い病気について、気になる症状などから代表的なものを説明します。
腹痛や下痢、嘔吐を伴う
“腸炎”などでは食欲不振によって摂取エネルギーが減ることもありますし、消化や吸収不良によってうまくエネルギーが摂取できないこともあります。
多くの“食中毒”では下痢を伴うことが知られています。また病原菌や病原体の出す毒素によって吐き気が出ることもあります。
不眠やイライラ
日常的な“ストレス”によって体重減少が起こることがあります。
ストレスによって胃腸炎を起こす場合もありますし、血圧が上昇するなどさまざまな症状として体に現れてきます。
“バセドウ病”などの甲状腺疾患では、すぐ感情的になってしまうことや、目つきや顔つきが鋭く、眼球が出てくるなどの症状を見せることがあります。
関節の痛み
“関節リウマチ”では体重の減少を伴う方がいらっしゃいます。関節の変形や節々の痛みが伴う場合には注意をしましょう。
咳を伴う(喀血など)
“流行性感冒”などで熱や咳を伴って消費エネルギーが増えて体重減少を来すことがあります。
“肺結核”という病気では結核菌のいる肺の細胞ごと、体の免疫が破壊して結核菌を体外に排泄しようとします。そのときに肺の細胞から出血をして、喀痰や咳とともに血液を吐くことがあります。
咳による消費エネルギーの増加をはじめ、多くのエネルギーが使われて体重の減少がみられます。
貧血や内出血がある
“悪性リンパ腫”や“骨髄性白血病”などの血液のがんでは、出血をうまく止められずに内出血をすることや、貧血を起こすことがあります。
また自分の正常な細胞を壊してしまう病気によっても、内出血などが起こりやすくなることがあります。
自覚症状があまりない
がん細胞が無秩序に増殖する際に、破壊された正常な細胞や増殖したがん細胞から化学物質が放出されます。
これを“がん悪液質”といって代謝に異常を起こすことがあります。
筋肉量や脂肪量が異常代謝によって減り、体重の減少を起こします。
自覚症状がなかったとしても、定期的な健康診断などによって病気が発見されることも多くあります。
医師の診察を受けることで、体重減少の原因が判明すれば早期治療にも繋がりますので、不安を抱えている場合には受診をおすすめします。
このような症状を併発していたらすぐに相談してください!
気を付けるべき症状
体重の減少にはさまざまな原因や病気の可能性があることをお伝えしました。しかし病気の中には様子を見てはいけないものや、緊急性を要する病気があります。
前項で挙げた症状と重複する部分もありますが、気を付けるべき症状について記載をします。体重減少に伴ってこれらの症状がある場合には、一刻も早く医師に相談することをおすすめします。
がんの疑い
健康診断や血液検査などで“悪性腫瘍”の疑いが指摘された場合には早期発見、早期治療によって以降の生活にも大きな違いが出てきます。
筋肉が細くなってきた
“筋萎縮性側索硬化症(ALS)”や“筋ジストロフィー”などの病気では筋肉が徐々に痩せ細っていきます。
自己免疫性疾患
自分の正常な細胞を攻撃してしまう病気の多くでは、体重減少を伴うことがあります。
逆に体重減少から病気の発見に繋がることもあるほど、多くの病気で見られる症状ともいえます。
関節が変形している、炎症を起こしている
“関節リウマチ”や“全身性エリテマトーデス(SLE)”などの病気では体重減少を伴うことがあります。
筋肉が痛い
“多発筋炎(多発性筋炎)”などの病気でも筋肉が破壊されて体重減少することがあります。
皮膚にあざ
“血管炎症候群 ”に含まれる病気では、皮膚に内出血をしたようなあざ(紫斑)や、深いところまで組織がダメージを受ける潰瘍ができることもあります。他の組織が破壊されることもあり、体重減少が見られることがあります。
目立った症状がない状態であっても、初期症状として体重減少を伴う病気は多くあります。意図しない体重減少には何らかの原因があると考えられますので、早めの受診をおすすめします。
著者 Writer
- 巖本 三壽(いわもと さんじゅ)
- 昭和大学 医学部 卒業後、昭和大学 小児科に入局。昭和大学の医学部、薬学部で基礎医学や病態・薬物治療の教鞭をとる傍、小児・内科診療の医療に携わる。2023年、家本循環器内科院長に就任。
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