いつもの慣れた通路や、特に落下物もない平坦な道で、いつも通り歩いているのにつまづいて転んでしまう。特に原因も見当たらないとき、なぜ自分が転んだのかも理解できずに不安になってしまうものです。
私たちは年齢を重ねると徐々に筋力が落ちたり、感覚が鈍くなってきたりすることを避けられません。
もちろん気をつけて生活を送っている方もいらっしゃいます。それでも以前は簡単にできたことが難しくなってきたということは多々あります。
転びやすくなる原因のひとつに、筋力の低下があります。今までは意識せずにしっかりと足を上げられていたのに、同じ感覚で足を上げても十分に上がりきらずバランスを崩してしまうことがあります。
他にも感覚が鈍ることで、たとえば自分の足先の位置がうまく認識できずに、思ったよりも手前に足を踏み出してバランスを崩すということもあるでしょう。
ところが脳や体に何かしらの問題があって“よく転ぶ”ときには、注意が必要かもしれません。様々な病気によって転びやすくなっている場合には、医師の診察が必要となってきます。
“手足がふるえる”というキーワードと共に、ここでは“ふるえ”や“転びやすさ”などの話を進めていきましょう。
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目次
症状が現れるメカニズム
手足など骨格の筋肉は、私たちが動かそうと意志を持って動かすことができます。少し難しい言い方にすると、「随意に動かすことができる」と言い換えられます。
そうではなく、筋肉が意志とは無関係に動いてしまうことがあります。随意ではないので、こうした筋肉の勝手な動きを“不随意運動”と呼びます。
手足の震え(ふるえ)
“手足がふるえる”という症状も不随意運動の中に入ります。健康な方でもストレスなど心理的な原因や、緊張しているとき、寒いときなどに出るふるえはあります。
それらのふるえは正常な体の反応といえますが、日常生活に支障が出てくる“手足のふるえ”には注意が必要となってきます。
転びやすい
“転びやすい”原因にも様々な原因が考えられます。老化による筋力低下も原因のひとつですし、病気による原因も多岐に渡ります。
筋力の低下する病気、筋肉がうまく動かせない病気、位置を察知する感覚が低下する病気など、こうした病気の全てで、“転びやすい”という症状が出る可能性があるといえるのです。
また体のバランスを司る“小脳”という部分に障害が起こる病気では、同じく“転びやすい”という症状も現れてきます。
他にも、平衡感覚を担当している“耳”に障害が起こる病気でも、“転びやすい”という症状が出る可能性があります。
手足のふるえを感じる病気とは
“手足がふるえる”原因にはたくさんあって、筋電図検査などさまざまな検査をすることで病気の姿が見えてきます。様々な病気の中でも、“手足がふるえる”という症状が多くの患者さんに見られる病気もあります。
“パーキンソン病”という病気がそのひとつで、脳でドパミンという物質を作る部分が障害を受けることで起こる病気です。その部分はドパミンの生成や、筋肉の動きを制御する役割もあります。
ドパミン
快楽や意欲、喜びといった感情、運動の調整、ホルモンバランスの維持など、さまざまな役割のある神経伝達物質のひとつです。ドパミンの量が減ることで、意欲の低下や感情的な不安定さなどを引き起こすことが考えられます。
ドパミンとアセチルコリン
ドパミンとは別の神経伝達物質で、アセチルコリンという物質があります。このふたつはお互いに影響しあっていて、ドパミンが弱まるとアセチルコリンが強まり、ドパミンが強まるとアセチルコリンが弱まるという関係にあります。
アセチルコリン
アセチルコリンは、脳から伝わってきた命令を受けた神経が、筋肉を動かすために放出する物質のひとつです。筋肉側でアセチルコリンをキャッチすると、筋肉がピクッピクッと収縮します。
“パーキンソン病”ではドパミンが減ってアセチルコリンが強まり、それが不随意運動の起こる原因のひとつだと考えられています。“重症筋無力症”という病気では、アセチルコリンをキャッチする部分(受容体)が自分の免疫で破壊されてしまい、筋肉がうまく動かせなくなってしまいます。
転びやすい
“パーキンソン病”では“筋肉のこわばり(かたくなる)”や“姿勢を維持しづらい”という症状も多く見られます。バランスがうまくとれずに転んでしまうことや、足をうまく踏み出せずに転んでしまうこともあります。
小脳という部分では手足のバランスを保つ役割もあります。“脊髄小脳変性症”などの病気で小脳に障害が出ると、“転びやすい”症状が現れることもあります。
“多系統萎縮症”は脳の複数の場所に障害が出る病気で、障害の起こった部位によってはバランスがとれなくなることや、筋肉の動きが制御できなくなることがあります。
またこの病気では“尿失禁”や“低血圧”など、意識をせずに体が調整する機能が損なわれた症状を伴うことがあります。
他にも“メニエール病”などの病気では“めまい”を伴うことや、平衡感覚を失って“転びやすい”症状が現れることも考えられます。
一例として話をしましたが、“不随意運動”や“ふるえ”、“転びやすい”といった症状は様々な原因によって起こります。ここに挙げた以外の病気でも、非常に多くの病気で起こりうる症状ともいえます。
直接的な病気以外では、薬によってパーキンソン症状が出ることもあります。“統合失調症”などで使用される、ドパミンを抑える薬では特に注意が必要な副作用となります。
当院は、近隣の医療機関と緊密な診療連携を結んでいます。必要と判断した場合、神経内科等、専門の医療機関と連携して、診療いたします。
自宅での対処方法
転びやすい症状があるということは、実際に転んでケガを負うリスクが高い(フレイル)状態ともいえます。たとえば老齢で骨が弱くなっている状態であれば、転倒による骨折が原因で、要介護の状態になる可能性もあります。
フレイルと向き合う
フレイル予防やフレイルコントロールと呼ばれる、運動や食事を含む生活習慣のアドバイスをすることや、サポートするサービスも多く登場しています。
健康寿命を延ばすためにも、しっかりと体の状態を把握することが大切です。
転倒を防ぐ
転倒を防ぐためにマットを敷いたり、風呂場に滑り止めを施したりといった環境整備も重要です。
場合によっては手すりを設置することや、転倒時のダメージを最小限に抑えるためのクッションを用いることもあります。
“よく転ぶ”、“手足がふるえる”という症状は、徐々に出てきたのか、急に出たものなのか、その点にも注意が必要です。
老化による影響は原因のひとつではありますが、年を取るごとに出てくる病気が原因の可能性も否定できません。決して自己判断はせずに、こうした症状がある場合には 受診をおすすめします。
緊急性がある状態とは
転びやすかったり手足がふるえたりするという症状は、まずは医師の診察が必要な症状だといえます。
医師の診察によって原因を明らかにすることも、それ以降の生活をより良くするためには重要な要素だからです。
症状が急に現れた場合には、なるべく早い受診が必要な状態といえるでしょう。他の症状が伴う場合にも注意をしてください。
・性格が変わった(怒りっぽいなど)
・筋力が低下した
・歩き方が変わった
・歩幅が小さくなった
・言葉がうまく話せない
・声の高さが変わった、声がかすれる
・心拍数が速い
・興奮状態が続く
・意識障害がある
・記憶の問題がある
・手紙を書くとだんだん字が小さくなる
・尿が全く出ない
・尿が勝手に出てしまう
一例ですが、こうした症状を伴う場合には早めの受診が大切だと思われます。
また“転びやすい”、“手足がふるえる”という症状は原因が非常にたくさんある症状なので、それだけ他にも数多くの症状を伴う可能性があります。
ここに記載されていない症状が伴うことももちろんあります。少しでも不安に思うことがあれば、早めの受診をおすすめします。
著者 Writer
- 巖本 三壽(いわもと さんじゅ)
- 昭和大学 医学部 卒業後、昭和大学 小児科に入局。昭和大学の医学部、薬学部で基礎医学や病態・薬物治療の教鞭をとる傍、小児・内科診療の医療に携わる。2023年、家本循環器内科院長に就任。
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