高血圧、脂質異常症、糖尿病
高血圧、脂質異常症、糖尿病は、健康診断でよくチェックされる疾患ですね。
なぜ、健康診断でこれらの病気を見つけておく必要があるのでしょうか?
それは、これらの病気は、心筋梗塞、腎不全、脳梗塞といった日本人の死因の約3分の1を占める循環器疾患の原因となるからです。
もう一つ、検査をしないと気付かない、無症状のため重大な病気を見落とすからです。
幸いにも、我が国では健康診断が自治体、企業を通じてほとんどの人々に行われ、世界における有数の長寿大国となっています。
これらの病気は生活環境による事から起因します。すなわち、生活環境、生活習慣が重要な因子となっています。
それを明らかにしたのは米国のブレスローという学者で、デンバーに住んでいる生活規律の厳しいモルモン教徒と一般人には寿命に大きな違いがあり、健康的になる生活習慣を特定しました。
これをブレスローの7つの生活習慣と言います。
1)禁煙
2)禁酒または適度な飲酒
3)毎日朝食を摂る
4)十分な睡眠(7〜8時間)
5)適度な運動
6)適正体重の維持
7)間食をしない
このような研究は生活習慣病治療の基盤となっており、生活習慣病の予防、治療に重要です。
また、遺伝も重要な要素で、親族にこういった病気がある方はより注意が必要です。
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目次
高血圧
血圧は心臓の収縮により送り出される血液の量と血管の抵抗性(弾力性、血管収縮・拡張による調節)により生じます。
これらは、脳に酸素・ブドウ糖を送り、脳が活動できるように調整されています。
もし、この2つの成分が供給されないと、失神・意識喪失といった症状がすぐに出てきます。
そうならないために、自律神経の調整により心臓の機能、血管の収縮・拡張が調節され、さらに腎臓により体液量調節がなされます。
血圧の異常は、心臓機能、血管抵抗の状態、腎臓の調節、脳からの自律神経の異常が原因となります。
多くの高血圧は、血管壁に傷がついてしまい、血管の弾力性が失われて血管抵抗を上昇させる事が一因になします。
これが長年続くと、たくさんの血管損傷が生じるので、加齢により血圧が上昇してしまいます。
いわゆる動脈硬化症でが、一旦、こういう病態は治ることはないので、普段から動脈硬化症にならないように気をつけることが重要となってきます。
また、動脈硬化が悪化するとコレステロールが貯まる粥状硬化症というタイプになります。
ドロドロ膿のようなプラークを持つようになると、それが破裂することで動脈を一気に詰まらせ心筋梗塞や脳梗塞を引き起こします。
こういう状態が発見されれば、それに対する治療が必須となります。
塩分の摂りすぎと高血圧の関係はどのようになっているのでしょうか?
塩分の取りすぎは、塩分と同時に水分も体内に吸収されるので体液が増えて血圧が上昇します。
一時的であれば血圧は回復しますが、習慣的に高濃度の塩分を取り続けると繊細な腎臓の血管までが傷害を受けて腎臓の血流が低下して、塩分制限をしても高血圧のままになってしまいます。
収縮血圧が180を超えるような高血圧や収縮期(上の血圧)と拡張期(下の血圧)の格差がある血圧は脳出血をきたし易くなるほか、異常な血圧(家庭平均で収縮期血圧135mmHg以上、もしくは85mmHg以上)では動脈硬化症の原因となります。
普段から、血圧を測定し自分の状態を把握しましょう。
高脂血症
高脂血症は血液中の脂肪が高い状態を言いますが、体の脂質(水に溶けにくい物質)は主な物質に、中性脂肪とコレステロールがあります。
中性脂肪は、マーガリンやバターの主成分で水に溶けることはありませんが、血液中ではある種のタンパク質と結合して血液中を移動します。
中性脂肪は貯蔵エネルギーのひつで正常では皮下脂肪に蓄えられますが、異常な状況では肝臓などの臓器や腹腔に蓄えられる内臓脂肪が悪いとされています。
この異常な脂質は、炎症を引き起こす原因となると言われており、それらの脂肪組織から血糖値の異常をひきおこすホルモンを分泌させることや、肝硬変(肝臓がカチカチに固くなり機能がなくなる重病)を引き起こす一因となります。
また、ハイレベルの中性脂肪(500mg/dL以上)は、急性膵炎(身体中に消化酵素が回って、急性腎傷害をきたし生命が危険)をきたすことが指摘されており、早急な治療が必要になります。
もう一つの脂質、コレステロールは中性脂肪とは全く異なる物質で、これもある種のタンパク質と結合して血液を移動します。
肝臓から組織へ移動するコレステロールはLDL (Low Density Lipoprotein)コレステロールと呼ばれ、通常、悪玉コレステロールと呼ばれます。
組織から肝臓に移動するコレステロールは、H D L(High Density Lipoprotein)コレステロール、通常、善玉コレステロールと呼ばれます。
なぜ、悪玉コレステロールが高くなると悪いのでしょうか。体内中のコレステロールが多くなるとLDLコレステロールが吸収されなくなり、血液中を長く漂うことになります。
そうすると酸化ストレスを受けて変性すると免疫細胞が反応して炎症を引き起こし、動脈硬化の形成を促進することになります。
現在の、コレステロールを下げる薬により動脈硬化、および心筋梗塞などの血管病変の進行を予防することが大規模な臨床試験により明らかになっているので異常のある方に使用されます。
特に、脳梗塞や心筋梗塞をすでに起こしている方は、正常値よりもかなり低いレベルでの薬物による血中コレステロールの調整が必要となります。
糖尿病
血糖の調節がうまくゆかず血糖値が高くなる病気です。
血糖が高くなると糖が勝手に細胞の機能を司るタンパク質に結合して障害をきたすと言われています。
糖尿病の3大合併症として、慢性腎機能障害(現在の一番の腎透析の原因)、網膜血管障害による出血・失明、糖尿病性昏睡が知られていますが、その他、糖尿病壊疽(足が腐って切断を余儀なくされる)、動脈硬化を促進し心筋梗塞、脳梗塞リスク増大、感染症罹患時に重症化させる非常怖い病気です。
分類として
- インスリン(血糖値を下げるホルモン)を分泌する細胞が傷害されてインスリンが絶対的に欠乏して生じる1型糖尿病
- 肥満などによりインスリンの作用が抑えられてしまう2型糖尿病(インスリン分泌は正常、または高値)
- 妊娠により生じる糖尿病があります。
また、前述した原因以外にホルモン異常の疾患(甲状腺機能亢進や副腎皮質機能異常)によっても合併することがあります。
糖尿病も軽症な場合は、ほとんど症状がありませんが、重度になると口渇、多尿といった症状で気づくことがあります。
これは、血糖値が高くなりすぎることで浸透圧利尿が生じ体の水分が勝手に尿になって排泄され状態になるからです。
「脱水なのに尿が出てしまう」この状況を放置すると、前述の糖尿病性昏睡となり命を落とす危険があるので早急に病院で診察・治療を受けましょう。
重症になる程治療は難しくなるので、検診等で早期に発見しておくことが大切です。
著者 Writer
- 巖本 三壽(いわもと さんじゅ)
- 昭和大学 医学部 卒業後、昭和大学 小児科に入局。昭和大学の医学部、薬学部で基礎医学や病態・薬物治療の教鞭をとる傍、小児・内科診療の医療に携わる。2023年、家本循環器内科院長に就任。
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